"Fanfare Band Highlights WMC 2017" レビュー Disc 1
WMC2017のFanfare Band Highlightが11月上旬に届いた(個人輸入なので日本最速!)のですが、なかなか聴くためのまとまった時間を取れずに過ごしてしまったので、今更ながら簡易的なレビューをしようと思います。
A Diamond for Parker (Rob Goorhuis)
本作品は"testpiece 1st division"、つまり今大会の1部の課題曲の中で最も優れた演奏だったといえます。
Thomas Tallisによる「大主教パーカーのための詩編曲」 Archbishop Parker's Metrical Psalter に触発された作品となっております。
また、同様のテーマを使用して有名な作品といえば、R.V WilliamsのFantasia on a Theme of Thomas Tallis です。
イントロで心を掴まれ、静かに運ばれる主題に心奪われます。
作品としては、厳かな始まりからあふれる勢いに乗ったトッカータ調の主題へ繋がります。 その後広がりを見せたコラール調(原曲風です)に移行し、最後はトッカータ調を再現して終わりを迎えます。 楽器の特徴を遺憾なく発揮させる作曲となっています。
Astral Poetry (Olier Waespi)
Champion Concert Divisionの演奏です。
冒頭のA.Saxのソロは絶品ですが、全体的にソロ(カデンツァ)がちりばめられており、さらに高難易度の合奏によって支えられている曲の作りとなっております。 太陽系の惑星たちがおりなす公転のダンスを、ジャジーな超絶技巧とバロック式の構成(緩急緩急)で紡ぎあげたのが本作とのこと。
パワーにあふれております。 目まぐるしく変わる主題、流れるように受け渡される各種カデンツァが、太古から続く惑星のめぐりあわせを美しく表現します。
Earthrise (Nigel Clarke, arr. Luc Vertommen)
冒頭の音響は誰にも真似できないだろう(演奏も、作曲も!)という感じで迫ってきます。 この曲はアポロ8号を題材にしており、急緩急(地球の引力からの脱出-宇宙からの地球-帰還)を題材にしているそうです。
中間部の美しさはErick SwigersのAuroraをちょっと想起させる感じです。
Eric Swiggers - Compositions for Windband
この曲は冒頭で観客の心をわしづかみにするでしょう。
A Child like You (Andy Scott、arr.Thom Zigterman)
近年必ず1作はある、合奏にナレーションおよび独唱がつく作品です。
もともとはAndy Scott氏が作成したブラスバンド用のショートオペラを、本バンドがFanfare Bandにアレンジしたそうです。
Andy Scott (saxophonist and composer) - Wikipedia
イディ・アミンが独裁政権を敷く70年代初頭のウガンダにて、17歳のウガンダとアジア(印僑:インドからの移民、だと思います)の混血児の受け入れをめぐる話となっています。 Andy氏が6歳の頃の、彼の両親によるその少年の受け入れを通した難民に関する話が曲の構成のもととなっているそうです。
イディ・アミンといえば、映画「ラストキング・オブ・スコットランド」ですね。
Breathless from Jazz (Philip Wilby)
Philip氏が作成した4編から成るシンフォニックダンス"Jazz"の最終楽章となっています。
随所にちりばめられるNew Yorkへの憧憬、または"West side story"を作曲したL. Barnstein氏からの影響を隠さずに繰り広げられる、短いながらもドラマチックな作品となっています。